こちらでは、パラグアイにおける貧困の状況についてご紹介します。

目次
貧困の要因
パラグアイにおける主な貧困や格差の要因は、①土地所有の不均衡、②ジェンダー問題、③汚職によるインフラ整備不足(藤掛2018:90-91)、④独裁制への警戒心から議会の権限を強めたこと(藤掛2018:91、上田2016)等があげられます。
具体的に、1つめの土地所有の不均衡は、パラグアイにおいては10%の人が75%の土地を所有しているという土地所有の不均衡があることが貧困の要因の1つとされています(藤掛2018:91)。2つめのジェンダー問題は、女性の平均給与は男性の給与の約6割であり、賃金に男女格差があるという問題もあります(今井2015: 314、藤掛2017、外務省2017)。3つめは、1989年に終焉した独裁制に対する警戒心から、議会権限を強めたことで、議会が司法権にも及ぶ任命権限を付与された結果、三権が議会有力者の影響下に置かれ、「何をしても無処罰」の政治風土が創られました(上田2016、藤掛2018:91)。4つめの汚職によるインフラの整備不足は、ストロエスネル独裁政権時代は、故意にインフラの整備をせず、都市と農村の分断を図ったとされています(稲森2000: 3、藤掛2002: 32)。独裁政権が終焉した今日絵も、農村へ続くテラロッサと言われる未舗装の赤土道が残っている要因は汚職だと考えられます(藤掛2018)。
スラムとカテウラ
スラム、カテウラ地域は首都アスンシオン(人口52 万)の南西9~10kmほどのパラグアイ川沿いにあります(藤掛 2018:65)。実際のところ、行政上カテウラという名称は存在しませんが、カテウラゴミ集積地(/処理場)に近い場所をパラグアイの人々はカテウラと呼んでいます。
本基金の理事長・藤掛が2012年から開始したカテウラ地域における調査活動で目にしたものは、高く積まれたゴミ山とあちらこちらに散乱するゴミ、汚れた工場用排水が流れ込む川、汚れた水で緑色に濁った小川や水溜まりでした。アスンシオン市の2021年度の推定総人口は52万(INE2021)であり、これまでも首都人口の10%~25%程度がスラムに居住するといわれてきました(藤掛2021:18)。カテウラ地域に投棄されるゴミの量は、1日約1,500トンと推定され、人々はプラスチックやアルミニウムなどを分別して販売しています。他にも、ゴミ集積地(/処理場)ではなく,自分の家の庭をミニゴミ処分場にしているケースも散見されました(ibid.)。カテウラ地域の住民は、カテウラゴミ集積地(/処理場)や町で価値あるもの(ゴミ)を探し、それを集めて売ったり、加工したりして生計を立てています。
カテウラ地域の住民が抱える社会課題は、治安の悪さ、頻繁に起きる洪水、貧困による売買春、生協行きの不足による性感染症や望まない妊娠、教育を受ける機会に恵まれなかったり、カテウラ地域出身というだけで就職が困難になる等の社会的からの排除があります(ibid.:21-24)。
伝統工芸品ニャンドゥティと貧困
パラグアイには、ニャンドゥティという伝統工芸品があり、2019年7月にはパラグアイ無形文化国家遺産に登録され、その重要性が見直されています(藤掛2020: 292)。起源は複数の説があるが、パラグアイにおいてニャンドゥティは19世紀ごろから盛んに作られ、三国同盟(1864~1870年)後には女性たちの手仕事として発展した。当初は白色の糸のみが使用されたが、1970年以降のパラグアイの経済成長や他国との交流が進む中で、土産物としてカラフルなニャンドゥティが作られるようになった(ibid.)。
ニャンドゥティ作りの技は母から娘へ、また叔母から姉妹同士、ご近所同士で継承されており、完成した作品は組合に販売したり、不定期で村に訪れる仲介に販売するものの、買取価格がきわめて低く抑えられていることから、作り手は価格に満足しておらず、「ニャンドゥティを次世代に伝えたいが、ニャンドゥティ製作による利益があまりないことから、若者に継承できないし、興味も持ってもらえない」と語る高齢の作り手も多くいます(藤掛2019: 342、藤掛2020: 293)。
今後は、2020年に設立されたパラグアイ国立伝統工芸院(Insutituto Paraugayo de Attesanía)などのような組織を通じ、ニャンドゥティの価値をさらに高めていくことが必要だと考えられます(藤掛2019: 342)。また、NGOやNPOなどの団体によるフェアトレード取引も増加しており、適切な価格での販売と商品の品質向上が目指されています(藤掛2020: 293)。
貧困に対するミタイ基金の取り組み
ミタイ基金では、カテウラ地域においてネイルプロジェクトやヘアメイクプロジェクトなどを実施してきました。カテウラ地域におけるミタイ基金の活動については、ぜひこちらをご覧ください。
ミタイ基金では、パラグアイの伝統文化を引き継ぐ女性たちの貧困に対する取り組みとして、技術指導のための講習会やフェアトレード活動を行っています。ニャンドティに関する講習会やフェアトレードに関する活動については、ぜひこちらをご覧ください。
*参考文献は以下の通りです。
INE (Instituto Nacional de Estadística). 2020a PRINCIPALES RESULTADOS DE POBREZA
MONETARIA Y DISTRIBUCIÓN DE INGRESOS. ― 2021 ASUNCIÓN Proyecciones de población por sexo y edad2021.
藤掛洋子(2002)「パラグアイの女性政策とジェンダー ―「国連女性の10年」と民主化の中で」、『ラテンアメリカレポート』、第19巻、独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所、pp.32-42。
———-(2017)「パラグアイ農村女性の生活改善プロジェクト:JICA草の根技術協力を通じた六次産業化の課題と可能性」、『国際開発学会第28回全国大会論文集』、pp.1-17。
———-(2018)「パラグアイ農村女性の生活改善プロジェクト:農村女性のエンパワーメントとJICA草の根技術協力における大学の役割」、『常盤台人間文化論叢』、 Vol.4、pp.89-114。※誤植のお詫びと訂正
———-(2019)「パラグアイ伝統工芸品—ニャンドティの歴史と資源化について」、青山和夫他編、『古代アメリカの比較文明論』、京都大学学術出版会、p.341-344。
———-(2020)「伝統工芸品ニャンドゥティ」、ラテンアメリカ文化事典編集委員会『ラテンアメリカ文化事典』、丸善出版株式会社、pp.292-293。
———-(2021)「パラグアイのスラム「バニャード・スール」におけるリスクとジェンダー : COVID-19禍におけるカテウラ地域住民の日常実践にかかる一考察」、『国際ジェンダー学会誌』、国際ジェンダー学会、pp.9-31。
上田善久(2016)「2015 年の回顧:変貌するパラグアイの政治風土 」、『第 18 回パラグアイ便り』<http://www.py.emb-japan.go.jp/jap/pdf/KORAMU/koramu%2018.pdf>(2025年10月31日最終アクセス)。
外務省(2017)『平成28年度外務省 ODA 評価パラグアイ国別評価(第三者評価)報告書』。
今井圭子(2015)「パラグアイ—政治の民主化と女性の社会参画」国本伊代編『ラテンアメリカ21世紀の社会と女性』、新評論、pp.299-314



