パラグアイの女性たち

ここではパラグアイの女性が置かれている状況についてご紹介します。

目次

ジェンダー課題

パラグアイ農村部では、男性優位思想のマチスモやマリアニスモ(女性は夫ないし家長に従順であるべきだという考え)などが混在し、性別役割分業(性別によって職場や家庭において役割を分けること)もみられます(藤掛2008)。パラグアイの女性の平均給与は、男性の平均給与の60%とされており(今井2015、藤掛2017、藤掛2018)、女性が男性よりも貧困となりやすく男女格差が広がる要因には、農村女性や都市スラムの人々に雇用の機会が開かれていないことも大きいとされています(藤掛2017、藤掛2018)。

パラグアイにシングルマザーが多い理由は、三国戦争とチャコ戦争により、成人男性の人口が激減したことがあげられます。具体的に三国戦争とチャコ戦争による成人男性の人口減少は、男性1に対し女性5(男性1に対し女性10という説もあります)という比率になったとされ、カトリックの考えが浸透しているものの、国力としての子どもが必要だったため、一夫多妻制家族形態を許容することを非公式に認めてきたことも原因と考えられます。この経緯が先述のマチスモという考え方と相まって、男性が妊娠した女性を捨てる事例も多いと報告されています(藤掛2018)。

農村の女性たち

 パラグアイで35年間続いた独裁政権の間は、思想・言論の自由はなく、ビエド市の農業普及局職員は「農村の人々は発言することに慣れていない」と農村の人々について話すことがありました(藤掛2018)。また、農村男性も「3人集まって農作物に関する話をしていたらスパイ(Pyrague:ピラグエ)だと逮捕され、抑留された」と自身の経験を述べることもありました(藤掛2007)。このような歴史的背景に加え、ラテンアメリカ特有の男性優位思想(Machisumo:マチスモ)色濃く残る農村では、女性が公的な空間で発言することを「はしたない」、「でしゃばり」であると考える人もいます。

 月額所得の農村部における男女間格差は都市部に比べ大きく、都市部の男女間格差は男性1に対し女性0.77であるのが、農村部での男女格差は男性1に対し女性0.62と都市部より農村部の方が女性の所得が低く抑えられている(今井 2015、藤掛2017)。このように女性の賃金が男性よりも低いことに加え、貧困の女性化が進む他の要因としては女性に雇用の機会が開かれていないことが大きい。18歳以上の貧困層の男性の77.2%に、女性の40.8%に仕事があるものの、男性の15.5%、女性の51.4%が求職をしていない6ことを見ると、女性が求職したいと考える雇用がないと推察できる(藤掛2018: 91)。

農村における女性の性と生殖に関する状況

 リプロダクティブヘルスの定義とパラグアイ女性の性と生殖に関する意識・変化について、藤掛(2003)より以下引用します。
 リプロダクティブヘルスとは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力をもち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由をもつことを意味します。つまり、男女ともに自ら選択した安全かつ効果的で、法に反せず、経済的にも無理なく、受け入れやすい家族計画および女性が安全に妊娠・出産などができるようなヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれます。
 パラグアイでは小学6年生で性と生殖に関する授業があるものの、農村では中途退学をする子どもは入学者数の半数であり、特に女児は高学年になると望まない妊娠をしたり、家事労働に従事するために男児よりも就学の継続を断念したりする傾向が強くあります。特に農村部ではマチスモという男性優位思想が根強く残り、何人の女性との間に、何人の子どもを産ませたかが男性性の象徴となります。また、女性はマリアニスモ(男性に従順)であることが求められます。また、既婚であるにも関わらず子どもがいない女性に対し、「不完全(imcompleta: インコンプレタ)」と侮辱的な言葉が向けられることもあります。加えて、「神様がもう十分とおっしゃるまで子どもは授かり続けるもの(Hasta que Dios diga basta)」という語りが農村のみならず都会においてもしばしば聞かれます。このような農村社会において、家族計画を実施することは女性たちにとって容易なことではありません。

ミタイ基金の農村女性のための活動

 
 ミタイ基金では、パラグアイの女性を支援する様々な活動を行っております。
 
 具体的に、パラグアイの伝統文化を引き継ぐ女性たちの貧困に対する取り組みとして、フェアトレード活動を行っています。フェアトレードに関する活動については、ぜひこちらをご覧ください。

 他にもミタイ基金では、YNU×JICA草の根プロジェクトのカウンターパートを務めており、パラグアイ農村部の女性をサポートするための生活改善プロジェクトに貢献しています。YNU×JICA草の根プロジェクトの活動はこちらからご覧いただけます。

●JICA草の根技術協力事業 第一フェーズ『パラグアイ農村女性生活改善プロジェクト~横浜から夢を紡ぐ~』(2016年から2021年)
●JICA草の根技術協力事業 第二フェーズ『パラグアイ複合的農村開発プロジェクト~アグリツーリズムの展開に向けて~』(2022年から2025年)

 

 

<主な引用参考文献>                                   

藤掛洋子(2003)「パラグアイ農村女性の性と生殖に関する意識とその変化―農村女性の家族計画の「語り」と「実践」を手掛かりに(1994年―2001年)―」、 根村直美編『ジェンダーで読む健康・ジェンダー・セクシュアリティ:健康とジェンダーⅡ』、明石書店、pp.85-115。

———-(2007)「パラグアイの農村女性:日常実践とエンパワーメント」、坂井 正人・鈴木 紀・松本 栄次編『朝倉世界地理講座第14巻ラテンアメリカ』、朝倉書店、pp.342-350。

———-(2008)「農村女性のエンパワーメントとジェンダー構造の変容-パラグアイ生活改善プロジェクトの評価事例より」、『国際ジェンダー学会誌』、国際ジェンダー学会、pp.101-132。

———-(2017)「パラグアイ農村女性の生活改善プロジェクト:JICA草の根技術協力を通じた六次産業化の課題と可能性」、『国際開発学会第28回全国大会論文集』、pp.1-17。

———-(2018)「ジェンダーや貧困の”リスク”に立ち向かう地域社会の創造:パラグアイの農村と都市スラムの研究実践からみえるもの」、横浜国立大学先端科学高等研究院・リスク共生社会創造センター編『リスク共生学:先端科学技術でつくる暮らしと新たな社会』、丸善出版、pp.58-72。

今井圭子(2015)「パラグアイ—政治の民主化と女性の社会参画」国本伊代編『ラテンアメリカ21世紀の社会と女性』、新評論、pp.299-314。

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